養老孟司 昆虫ブログ

虫日記 養老の森

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2014年09月29日

オオゾウムシ

写真に出ているのは、オオゾウムシです。日本でふつうに見かけるゾウムシでは最大級です。どこにでも、つまり平地にも山にもいます。マツの枯れ木や切り株に多く、伐採木を置く土場でよく見かけます。灯火に寄ってくる習性もあるので、夜間採集でも取れるし、家の明かりに来ることもあります。ところが私は、このゾウムシが飛んでいる姿を見たことがありません。ふだん網を持たないで採集をするので、飛んでいる虫はあまり採らないから、見ないのかもしれないのですが、それにしても一度くらい、飛ぶ音を聞いてみたいのですが。飛んでいるのを見た人はぜひ教えてくださいね。

オオゾウムシがいるのは、日本だけではありません。ラオスにもいるし、ボルネオにもいるし、オーストラリアでも一回だけですが、採ったことがあります。標本も残っています。要するに東南アジア全体から豪州まで広がっているわけです。外国でオオゾウムシを採ると、なんだか癪です。せっかく遠いところまで来たのに、またオオゾウかあ。そう思うのですが、それは私の勝手です。オオゾウムシのせいじゃありません。

オオゾウムシが気に入らない点がもう一つあります。標本にして取っておくと、油が出てきて黒くなってしまうのです。ときどき黒くならない個体があるのですが、どういう場合に黒くならないのか、それがわかりません。標本にする前に解剖して油を抜いておこうか。以前にそう思って、解剖しようとしたら、やたらに硬いのです。ゾウムシは外側が硬いことが多く、しばしば針が刺さりません。カタゾウムシはその典型です。それではと解剖を諦めて、アセトンに入れて油を抜こうと思い、入れておいたのですが、いつまでも抜けないので、そのうちゾウムシを入れたビンごと、行方知れずになりました。

オオゾウムシの模様ですが、茶色の地に黒や白の斑点があります。その規則が面倒くさくて、記述する気になりません。ある意味でスズメの模様に似ています。スズメの模様を説明するのは面倒じゃないですか。オオゾウやスズメのような「普通種」がこういう記述しにくい模様をしているのは、なにか意味があるのかもしれないと思って、以前から考えていますが、いまだにわかりません。モンキアゲハなんか、真っ黒に白点ですから、すぐにわかります。わざとわかりにくいようにしているんじゃないかなあ。そう思うんですが、それでどういう意味があるのか、なにか得することがあるのか、わからないんです。

オオゾウムシはじつはオサゾウムシ科に属するので、その意味では「正当の」ゾウムシ、つまりゾウムシ科の種ではありません。あとオサゾウムシ科でたいていの人が知っているのはコクゾウムシでしょうね。この仲間はほかにも種類がいくつもあって、箱根の家の前のササにはササコクゾウムシがいます。オサゾウムシは暖かい地方に多く、ラオスやボルネオで採集していると、この仲間が何種類も採れます。色もきれいなのが多く、これでもオオゾウやコクゾウの親戚か、と思います。多くはショウガとかヤシとか、単子葉の植物に依存しています。

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